まったりとした時間が流れていたとある午後。
携帯電話の着信音が静寂を破りました。
大親友のTちゃんからです。
「あのさぁ?新しい商売始めるんだけどさぁ?今から来れる?」
一応疑問形ですが、「無理」とは言わせない悪友Tちゃんです。
いそいそと駆け付けると、Tちゃんは平気な顔で“ムチャ”を言い始めました。
「お店始めるんだけど、駐車場がないから建物の窓をブチ破って車停めたいんだよね~」
Tちゃん…。テナント物件は返す時には元に戻さなきゃならないんだよ…?わかってるよね…?
Tちゃんは当然その辺の“大変なこと”は私が考えてくれるものと思って疑いません。
澄んだ瞳でこちらを見るばかりです。
こうなったら仕方がない。悪友の期待に応えるより無いようです…。
難題ですが、これもお仕事です。早速設計を開始します。
ガラスは取り外しますが、復旧するときのことを考えて、枠のサッシは無傷で残します。
外部と店内側にスロープをつけてサッシを乗り越える作りにします。
しかし車高の低い車はサッシの高さを乗り越えられないことが判明しました。
そこで、店内側の床を上げて車を乗せてしまうことにしました。
店舗の開店に合わせて工事開始となりましたが、工事は繁忙期の2月。
社内の現場担当者に空きはありません。各工種職人さんも混んでいる状況です。
またあの社内改装時のムチャ振りの様相を呈してきました。
私がやるよりありません。
こんな寒い時期の外部工事。
寒さとの闘いにおびえます。
初日はガラスの撤去です。
私のムチャ振りに一抹の不安を覚えたのか、ガラス屋さんの社長・専務揃って様子を見に来てくれました。
職人さんの安定の作業により、社長と専務の心配も杞憂に終わり、無事に撤去完了しました。
午後からは鉄骨屋さんが到着。
120mm角のスチールパイプと縞鋼板を使って外部側のスロープの造作を製作して初日は終了しました。
翌日からはいよいよ店内側の床上げです。
当ブログおなじみレジェンド大工「Nさん」の登場です。
約2.5トンの車重に耐えられるよう、角材を狭めの間隔で設置して積層合板を貼ります。
ムチャを通すとどこかにしわ寄せが来ます。
床上げは1日で終わらせなければ予算と店のOPENに影響が出ます。
レジェンドに一日で終わらせてほしい、とお願いすると
「終わるかな…」と言いながら、約束通り1日で終わらせてくれました。
出来上がった駐車スペースは、資材を満載した弊社のハイエースで乗り上げても全く問題ありません。
ありがとう!Nさん!
店舗側の工事も無事完了。
※またしても完成店舗の写真はありません※
またしても職人さんを振り回しつつ、工事を終えることが出来ました。
相変わらず発注から施工まで超特急で突き進む弊社の工事に対応してくださる各社協力社・職人の皆様、ありがとうございました。
ムチャな要望にも応え、無事に現場を納められた満足感に浸りながら、Tちゃんとのむビールが格別においしかった54歳目前の春でした。